ここから4 ― 障害・表現・共生を考える5日間
KOKOKARA4 : First steps on disability, expression and co-existence
2019年12月4日(水)- 12月8日(日)
国立新美術館(東京・六本木) 1階展示室1A
入場無料
自分にとって普通のことが、『ある人』にとっては普通ではない。だから自分と『ある人』は直接コミュニケーションがとれないが、そこに3つ目の何かが入ることで関係が成立し一つの世界が出来上がる。異なる文化を持つ人々の共生について考えさせられる展示会だ。
12月8日(日)まで国立新美術館(東京・六本木)で開催されている「ここから4」展は、共生社会や文化の多様性について関心を深めることを目標として毎年開催され、今回が4回目の開催となる。
例えば、日本の文化の一つとして世界によく知られているマンガ。
4コママンガについて、深く考えたことはあるだろうか。
普段目にする4コママンガは1枚の紙の上に縦に4コマ並んでいて、絵と一緒に台詞や擬音語が入っている。
しかし、視覚障害のある人がこの4コママンガを読みこなすのは困難だ。単に台詞を点字にしただけでは、1コマの中に台詞が二つ入っていたら、台詞の時系列が分からず理解の妨げになるだろう。
いがらしみきお+渡邊淳司+東京藝術大学芸術情報センター(大谷智子、小笠原美波、加藤あずさ、城戸彩夏、篠田怜寿、高山七虹)の「触れる・感じる・4コママンガ『ぼのぼの』」が、この問題の解決を図っている。
元の4コママンガを左から右に並べ、吹き出し台詞の順序が時系列で逆にならないように、元の吹き出し台詞の位置を並べ替えた。また、吹き出し部分に凹凸をつけたり、素材を変えたりし、触った感じで視覚障害のある人が理解できるようにしている。
一見すると綺麗なアート作品だが、そこに込められた深い意味を知ると、4コママンガに対する固定観念が覆されるような作品だ。
吉村和真・藤澤和子・都留泰作の「LLマンガ」プロジェクトは、日本で前例のないL Lマンガだ。元となっているのは「L Lブック」という障害を持つ人や外国人などに向けて、読みやすい形式で書かれた本で、それをマンガに応用する試みが行われている。「1つのコマに、あまりに多くの出来事を盛り込まない」などの「L Lマンガのガイドライン」を作り、一般的なマンガ表現と「L Lマンガのガイドライン」に沿ったマンガ表現を対比して展示している。読み比べるとそれぞれの特徴がよく分かるようになっている。
広い展示会場で展示作品をゆっくり眺めていると、異なる文化が共生している空間の実に自然なことに気づく。マンガ以外にも服飾や触ると音の鳴る石など、普段はあまり目にすることがない雰囲気の作品に出会える。自分が思う以上に世界は多様で可能性に満ちている。共生社会に関心がある人だけでなく、新しい可能性を模索している人にもおすすめの展覧会だ。

【展覧会名】ここから4 -障害・表現・共生を考える5日間
【会期】2019年12月4日(水)-12月8日(日) 会期中無休
※国立新美術館は毎週火曜日休館
【開館時間】10:00-18:00 ※12月6日(金)、7日(土)は 20:00まで ※入場は閉館の30分前まで
【会場】国立新美術館 1階展示室1A
【主催】文化庁
【共催】国立新美術館
【制作】アートインプレッション
【観覧料】無料
●お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
●展覧会ホームページ:
●Twitter: @kokokara̲bunka
●Facebook:
●国立新美術館ホームページ:

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